通信制高校への進学や転入・編入を希望する生徒が増えていますが、その学費の仕組みを十分に理解していない方も多いのではないでしょうか。
通信制高校は、全日制高校とは異なる学習スタイルを提供しており、特に自分のペースで学びたいと考える生徒にとって魅力的な選択肢となります。
しかし、その一方で、学費の構造が複雑であるため、正しく理解しておくことが重要です。例えば、大阪府の全日制私立高校の平均授業料が約60万円であるのに対し、通信制高校の学費は比較的低く設定されています。
これは、通信制高校が通常 1単位ごとに授業料を設定している ためであり、履修する単位数によって総額が変動する仕組みだからです。
本記事では、通信制高校の学費について、授業料の計算方法や追加で発生する可能性のある費用 について詳しく説明します。また、大阪府の私立高等学校等授業料支援補助金制度 や、サポート校に通う場合（ダブルスクール）の費用についてもご紹介します。
公立と私立の通信制高校における学費の違い
まず理解しておくべき点は、全日制の私立高校や公立高校の授業料は年間で示されるのに対し、通信制高校の授業料は通常、1単位ごとに計算される という点です。この違いを踏まえ、公立と私立の通信制高校の学費の違いを見ていきましょう。
＜公立通信制高校の学費＞
公立の通信制高校の学費は、私立の通信制高校と比べて非常に安価であることが、大きなメリット です。例えば、大阪府の公立通信制高校では、入学金が500円、年間の費用は約4万円 です。全国的に見ても、公立通信制高校の学費はこの程度の水準ですが、各都道府県によって異なるため、具体的な情報を事前に確認することをおすすめします。
ただし、公立の通信制高校は 私立と比べて学校数が少ない ため、選択肢が限られます。大阪府では、公立の通信制高校は 1校のみ です。また、公立通信制高校では、自宅で作成したレポートを郵送する際の送料を生徒が自己負担する必要がある ほか、学習サポートが少ないというデメリットもあります。
さらに、学習サポートが限られているため、自己管理能力が求められる点も公立通信制高校の特徴 です。自分で計画を立てて学習を進めることが苦手な場合は、学習支援が充実した私立の通信制高校を検討するのも選択肢の一つ でしょう。
＜私立通信制高校の学費＞
私立の通信制高校の学費は、公立と比べて高くなりますが、その分 学習面や学校生活におけるサポートが充実している のが一般的です。特に 体調面や精神面のケアが手厚い ことが特徴であり、安心して学べる環境が整っています。
例えば、レポートを電子化し、タブレットで解答してWeb経由で直接送信できる 学校も多く、紙の郵送が不要なため、締め切り間近のレポートもスムーズに提出できます。特に、不登校経験者にとっては、こうした デジタルツールを活用した柔軟な学習環境 や メンタルケアの充実 は大きなメリットとなります。
また、私立の通信制高校では 個別指導やカウンセリングサービス を提供する学校も多く、生徒一人ひとりのニーズに応じたサポートを受けることができます。
さらに、学校によっては 特定の分野に特化したカリキュラム を提供している場合もあり、専門的なスキルを身につけることが可能です。そのため、生徒は 自分の興味や将来の目標に沿った学習 を進めることができ、より充実した高校生活を送ることができます。
私立通信制高校の学費の内容
【入学金】
多くの私立通信制高校では、入学金は 1万円から10万円程度 に設定されていますが、これは 学校や選択するコースによって異なります。
ただし、特待生制度や推薦入試を通じた入学金の減額や免除の制度はほとんど見られない ため、入学を希望する際には 事前にしっかりと確認することが重要 です。
【授業料】
全日制高校の授業料は通常 年間の総額 で示されますが、通信制高校の授業料は 1単位ごと に設定されるのが一般的です。これは、学年途中の転入や、生徒ごとの履修単位数の違いなど、学習量が一定でないため であり、生徒が 自分のペースで学習を進められるようにするための柔軟な制度 です。
中には、1単位ごとの授業料ではなく、年間授業料として表記している学校 もあります。
この場合、
- 年間25単位や30単位を履修した場合の総額を示している
- 登校日数が多いコースでは、日々のサポート費用を授業料に含めて総額として表示している
といったケースが考えられます。
では、私立通信制高校の 1単位あたりの授業料の相場 はどのくらいでしょうか？
学校によって異なりますが、 1単位あたり7,000円～12,000円程度 の学校が多く見られます。例えば、 1単位あたり10,000円の学校 を考えてみましょう。高校卒業に必要な単位数は 74単位 なので、総額で 740,000円 が必要になります。この金額は 1年間の授業料ではなく、3年間の総額 です。
具体的な内訳は、
- 1年目：250,000円
- 2年目：250,000円
- 3年目：240,000円
となり、合計 740,000円 となります。
【その他の費用】
「施設整備費」「教育関連諸費」「学習サポート費」「クラス費」など、その他の費用の名称や金額は学校やコースによって異なります。また、学校によっては、授業料とその他の費用を合算して表示している場合 もあります。
これらの費用は、学校の運営や教育活動を支えるために必要なもの であり、授業料とは別に 年間10万円～30万円程度 の費用を 事前に用意しておくと安心 です。また、教科書代や制服代、校外学習費なども考慮 する必要があります。これらの費用は、学習の質を向上させ、より充実した学校生活を送るための投資 と考えることができます。
さらに、合宿形式のスクーリングを実施している学校 では、宿泊費や交通費 などの追加費用がかかる場合があります。例えば、大阪に住んでいる生徒が、大阪府外にある通信制高校に入学した場合、基本的にスクーリングはその認可を受けた都道府県で実施される ため、交通費や宿泊費の負担が発生する可能性があります。
また、週あたりの登校日数によって追加の費用が発生する学校 もあります。入学を検討する際には、予期せぬ出費を避けるためにも、これらの費用について事前に詳細を確認することをおすすめ します。
学費に関する制度や奨学金
※学費に関する制度や奨学金の内容は、変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトや関係機関の案内をご確認ください。
私立高等学校等授業料支援補助金制度（大阪府）
大阪府では 令和6年度から、所得に関係なく授業料が無料になる新しい制度 が導入されました。この制度は、家庭の経済状況にかかわらず、すべての生徒が平等に教育を受けられるようにすることを目的としています。ただし、この制度の適用は段階的に進められます。
- 令和6年度： 3年生から適用開始
- 令和7年度： 3年生と2年生に拡大
- 令和8年度： 全学年に適用予定
段階的な適用により、制度の円滑な運用と適用範囲の拡大を図っています。
⚠️ 注意点
- この制度で無料になるのは授業料のみ であり、すべての学費が無料になるわけではありません。
入学金、教材費、施設整備費などの費用は引き続き自己負担となります。 - この制度は、私立高校生等就学支援推進校に指定された学校のみ適用されます。
入学を検討する際は、必ず対象校であるか事前に確認してください。
☘️英風高校は大阪府の就学支援推進校です。
奨学金制度
あしなが育英会
あしなが育英会は、以下の状況にある家庭の子どもを対象とした奨学金制度 です。
- 親が病気や災害（※道路上の交通事故を除く）で死亡
- 親が自死した
- 親が著しい障がい認定を受けている
📌 支給額： 高校生（国公立・私立ともに）月額30,000円（給付型）
交通遺児育英会
交通遺児育英会は、以下の条件に該当する家庭の子どもを対象としています。
- 保護者が道路上の交通事故により亡くなった
- 保護者が重度の後遺障がいを負い、経済的に修学が困難になった
支給額： 以下の中から選択可能（無利子貸与 + 一部給付）
- 月額2万円（うち1万円給付）
- 月額3万円（うち1万円給付）
- 月額4万円（うち1万円給付）
📌 入学一時金の支給あり
サポート校の学費について
通信制高校について調べていると、「サポート校」という言葉を目にすることがあります。通信制高校とサポート校は異なる教育機関であり、サポート校は通信制高校そのものではありません。
サポート校とは？
サポート校は、通信制高校の学習を支援する施設であり、塾のような役割を担っていると考えるとわかりやすいでしょう。具体的には、通信制高校のカリキュラムに沿った学習の補助を行い、生徒がより効果的に学習を進められるようサポート します。
例えば、以下のような支援が提供されることがあります。
- 授業の内容を深く理解するための補習
- 試験対策のための特別講座
- 進路指導やカウンセリング
これらのサポートにより、通信制高校の生徒がスムーズに学習を進められるよう支援しています。
サポート校の学費について
サポート校は、通信制高校の学習を支援する役割を果たしますが、通信制高校の授業料とは別に、追加の授業料が必要です。そのため、サポート校に通うことで、より手厚い学習支援を受けることができます。特に、学習に不安を抱えている生徒や、より高い学力を目指す生徒にとって、大きなメリット となります。
ただし、サポート校は「学校」ではないため、通学時に学割が適用されない場合があります。
- 学割が適用されないと、交通費が想定以上にかかる可能性 があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
- 通学にかかる費用も含めて、総合的に検討することが重要です。
サポート校の学費の相場
サポート校の学費は、学校によって大きく異なります。
- 通信制高校の授業料に加え、年間30万円以上が必要なサポート校もあります。
- 学費は提供されるサポートの内容や質によって変動するため、どのような支援が受けられるのかを事前に確認することが重要です。
ダブルスクールの場合の費用
通信制高校に通いながらサポート校に通う 「ダブルスクール」 を選択する場合、初年度の納入金が50万円～100万円近くになることもあります。
ただし、その分 個別指導や少人数制のクラス が設けられていることが多く、生徒一人ひとりの学習ペースや理解度に合わせた指導が行われるため、学習効果の向上が期待できます。
まとめ
学費が高いからといって必ずしもその学校が優れているわけではなく、逆に学費が安いからといって劣っているわけでもありません。各学校には独自の特色があり、それに基づいて学費が設定されています。
学費の違いは、提供される教育の質やサポート内容の違いによるものが多いため、自分の学習スタイルや目標に合った学校を選ぶことが大切です。インターネットや案内資料だけでは、学校の実態が分かりにくい場合もあります。
そのため、疑問や不明点がある場合は、学校の担当者に直接問い合わせたり、実際に学校を見学したりして情報を得ることをおすすめします。
学校見学のメリット
- 実際の授業の様子を確認できる
- 施設の充実度をチェックできる
- 教職員の対応を直接感じ取れる
このため、より具体的なイメージを持ち、自分に合った学校を見極めるための判断材料を得ることができます。
